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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)11450号 判決

一 原告が本件実用新案権を有していること、本件登録請求の範囲が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。

二 右当事者間に争いのない本件登録請求の範囲に成立に争いのない甲第二号証(実用新案公報(甲))を総合すれば、

本件考案は、「果菜類用敷台に関するものであつて、………畑地において、西瓜、南瓜、マクワ瓜、メロン、トウガン(夕顔)等の果菜類を栽培するに当つて、成育しつつあるそれら果物の下に敷き、それら果物を病虫害から保護し、完全な成育を計るためのものであり」(実用新案公報(甲)一欄二六ないし三一行。なお、「マククワ瓜」とあるのは「マクワ瓜」の誤記と認める。)、その構成要件は、次のとおりであることが認められる。

(1) 任意形状の外周縁辺を有する平板に、その表面から裏面にまで貫通する孔が設けられ、かつ、その表面に平板の中心に向つて放射状に配列された複数個の突出部が設けられていること、

(2) 右(1)のような構造に発泡したプラスチツクで一体に形成されていること、

(3) 果菜類用敷台であること。

そして、前顕甲第二号証によつて認められる本件明細書の考案の詳細な説明の欄の記載によれば、本件考案は、右構成要件(2)を備えることにより、軽量であり、したがつて運搬に便利であるのみならず、風雨に晒されても変形腐敗のおそれがなく、したがつて果菜類が病虫害に冒されることを防ぐことができ、構成要件(1)のうちの孔を備えることにより、雨水がこの孔を通じて敷台上から畑土中に排出されるので、果菜類が水中に浸されることによる被害を防止することができ、同(1)のうちの突出部を備えることにより、その突出部で果菜類の外皮の外周を支承するので、非支承部分における採光通風を良くして果菜類の発育生長を良好にし、たとえば、西瓜の敷台として使用すれば、西瓜の敷台に接する下面まで青色となつて玉返しの手間を省くことができるという作用効果を奏すること(実用新案公報(甲)三欄四行ないし四欄三行)が認められる。

三 しかして、前記構成要件(1)にいう「平板」の厚さについて、本件登録請求の範囲には、直接これを限定する文言は存しないこと前記のとおりであるところ、被告らは、右「平板」はやや厚手のものに限定される旨主張する。右の「やや厚手の」とはどの程度の厚さをいうのか被告らの右主張からは明確ではないが、この点はともかく、その限定解釈の根拠として被告らの主張するところを、以下順次検討することとする。

1 まず、被告らは、本件明細書の考案の詳細な説明の欄に、「図において、1は平板であり、」と記載されたうえで、その添附図面(特に、第1、第3、第4、第6図)に、突出部の高さとほぼ等しい厚さを有する平板が図示されていると主張する。

(一) 前顕甲第二号証によれば、なるほど右主張のとおりの事実が認められるが、同時に、本件明細書の図面の簡単な説明の欄に第1ないし第3図は「この考案に係る果菜類用敷台の1例」であること、第4ないし第6図は「他の1例」であることが明記されていることが認められ、添附図面は一実施例を示すものにすぎないことが明らかである。

(二) この点に関して、被告らは、更に、本件明細書の考案の詳細な説明の欄中の「この考案に係る果菜類用敷台の構造を図面について説明すると、つぎのとおりである。第1図乃至第3図に示した例は、平板の外周縁辺が円形のものであつて、第4図乃至第6図に示した例は、平板の外周縁辺が方形のものであるが、平板の外周縁辺の形状はこれらのものに限られず、任意の形状のものであつてもよい。」(実用新案公報(甲)二欄二五ないし三一行)との記載を引用して、本件明細書の添附図面は、平板の外周縁辺の形状に関する限りは一実施例にすぎないが、その他の点では、図面に示された「物品の形状」「構造」が本件考案の技術的範囲の限界を画するものであることを、本件明細書自体が認めているのであり、本件明細書にいう「1例」「他の1例」の文言は、平板の外周縁辺の形状に関するものであつて、平板の厚さとは無関係である旨主張する。

しかし、本件明細書の考案の詳細な説明の欄中の右引用部分は、その冒頭記載のとおり本件考案に係る果菜類用敷台の構造を「図面について説明」したものすなわち図面に基づいて説明したものにすぎず、右冒頭記載の文言自体はもとより、これに続く「第1図乃至第3図に示した例は、」以下の記載とを併せ考えても、いまだ、添附図面が平板の外周縁辺の形状以外の点では本件考案の技術的範囲の限界を画するものであることを示したものと解することはできない。

のみならず、前顕甲第二号証によれば、突出部の数について、本件明細書の添附図面には、三個のものと四個のものしか示されていないのに、本件登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の欄(実用新案公報(甲)二欄二三、二四行、三四、三五行)には、突出部は「複数個」設ける旨記載され、孔の数についても、添附図面には、補助孔も含めて計四個のものと計五個のものしか示されていないのに、本件登録請求の範囲には孔の数についての限定はなく、考案の詳細な説明の欄には「孔を少なくとも1個設け、」(二欄一七、一八行)、「4は、平板1に設けられた補助孔であつて、任意個数設けられ、」(二欄三六、三七行)と記載されていること、更に、突出部の形状についても、添附図面には、突出部の上面が円弧状に凹んだものしか示されていないのに、考案の詳細な説明の欄には、これと異なつた「突出先端面を一直線状の平面」とした場合の例についての記述(四欄七ないし一一行。被告らは、この記述について、本件考案の出願当初の明細書(成立に争いのない乙第三号証)の考案の詳細な説明の欄の記載(三頁一六ないし一九行)を引用して、意味不明であるというが、その意味するところは右記述自体から十分了知可能である。)の存することが認められ、このように、本件明細書自体に、添附図面に示された形状以外の形状について説明した部分があり、図面が一実施例にすぎないことを示しているのである。

(三) 以上によれば、本件明細書の添附図面は、本件考案の一実施例を示すものにすぎないことが明らかであり、被告ら主張の限定解釈の根拠となるものではない。前顕乙第三号証によつて認められる本件考案の出願当初の実用新案登録請求の範囲の「添附図面に表わし前述説明に詳記するとおり」との記述は、何ら右判断を左右するものではない。

2 次に、被告らは、本件考案の出願当初の明細書の考案の詳細な説明の欄に、本件明細書の添附図面と全く同一の図面(特に、第1、第3、第4、第6図)について「やや厚手の………台板」と記載されていると主張する。

前顕乙第三号証によれば、なるほど右主張のとおりの事実が認められるが、しかしながら、本件考案に係る敷台は、果菜類の下に敷いてこれを支えるものであること前記認定のとおりである以上、ある程度の厚さを必要とすることは当然であるところ、右考案の詳細な説明の欄の「やや厚手の」という記載からは、どの程度の厚さをいうのか明確ではないし、また同文言の前に「この考案に係る果菜類果物敷台の構造は、添附図面に表すように………」(三頁六、七行)と記載されており、その添附図面には、突出部の高さとほぼ等しい厚さを有する平板が示されているものの、同添附図面も本件考案の一実施例を示すものにすぎないこと前記の理由から明らかであり、かつ同添附図面に示されている突出部の高さ自体、添附図面において特に限定が附されているわけではないのであるから、平板の厚さを突出部の高さとほぼ等しいものに限定するものではなく、しかしてまた、出願当初の実用新案登録請求の範囲にも、本件登録請求の範囲と同じく、直接平板の厚さを限定する文言はなかつたのであるから、右「やや厚手の」という記載は、本件登録請求の範囲にいう平板につきその厚さを被告ら主張のように限定して解釈すべきものとする根拠となるものではない。

3 また、被告らは、本件登録請求の範囲中の「平板1……の表面から裏面にまで貫通する」との文言は、平板が相当の厚さを有するものであることを前提とした表現であると主張する。

本件登録請求の範囲の右部分以外にも、前顕甲第二号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の欄に、「その平板にはその表面から裏面に及び貫通した孔」(実用新案公報(甲)二欄一六、一七行)、「その孔は平板1の表面から裏面にまで貫通している。」(二欄三二、三三行)との記載があることが認められるが、しかし、右「表面から裏面にまで貫通する」という語が被告らの主張する「相当の厚さ」を当然の前提とする表現であるとは、にわかに速断し難く(被告らは、イ号物件は、薄手の敷物であり(第三、二1(二)の<1>´)、かつ、本件考案の平板がやや厚手であつたという欠点を克服したことを一つの特徴とする被告考案の実施品である旨(第三、二2(一)(1))主張するところ、成立に争いのない乙第一、第二号証によれば、被告考案の明細書の考案の詳細な説明の欄において、被告考案の考案者兼出願人であつて、被告日本スチレンペーパー株式会社とともに被告実用新案権を共有する訴外加藤行男自身、右のように被告ら主張によれば薄手であるはずの被告考案に係る敷物(シート)及びこれに穿設された通孔について、「シートの中心部にはその表面から裏面に貫通する通孔8を設けている。」(実用新案公報(乙)二欄一六ないし一八行)と記載していることが認められる。)、結局、右「平板1………の表面から裏面にまで貫通する」との文言だけをもつて、直ちに本件登録請求の範囲にいう平板につきその厚さを被告ら主張のように限定して解釈すべき根拠とすることはできない。

4 更に、被告らは、本件考案の実施品と思われる製品の厚さは、ほぼ本件明細書の添附図面どおりとなつていると思われる(本件考案の実施品である乙第四号証のものの平板1の厚さは、約一・五センチメートルである。)と主張する。

成立に争いのない甲第一号証、本件口頭弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四号証によれば、かつて原告とともに本件実用新案権を共有していた東洋化成株式会社が、厚さ約一・五センチメートルの厚手の方形台板から成る果物敷台を製造していた事実は認められるが、同会社製の右果物敷台が本件考案の実施品であるかどうか自体、本件考案の技術的範囲が確定されたうえでその技術的範囲に属するかどうかを判断するという過程を経て初めて明らかになるものであり、その技術的範囲の確定なくしては判断しえないものであるから、この課程を経ずにまず右果物敷台を実施品であるとし、これを本件考案の技術的範囲の確定の資料とすることは順序が逆であり、したがつて、右果物敷台が存在するからといつて、そのことは、本件登録請求の範囲にいう平板につきその厚さを被告ら主張のように限定して解釈すべき根拠となるものではない。

5 以上によれば、前記構成要件(1)の「平板」はやや厚手のものに限定されるとの解釈の根拠として被告らが主張するところは、いずれも、その主張のように限定して解釈すべき根拠となるものではないといわざるをえない。

しかして、本件考案に係る敷台は、前記二のとおり、畑地において西瓜等の果菜類を栽培するに当つて、成育しつつあるそれら果物の下に敷き、それら果物を病虫害から保護し、完全な成育を図るためのものであるから、果菜類の下に敷いてこれを支えるものである以上、これに耐える程度の厚さを必要とすることは当然であるところ、前顕甲第二号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の欄に、「この考案は、敷台としての役目を果たす必要から平板状であることを必要とし………た点にも特徴を有する。」(実用新案公報(甲)二欄一四ないし一九行)と記載されていることが認められ、これによれば、平板の厚さは、敷台としての役目を果たすに十分なものであれば足りると解するを相当とする。

したがつて、結局、本件考案の構成要件(1)の平板はやや厚手のものに限定されるとの被告らの主張は失当であり、平板の厚さについて格別の限定はなく、果菜類用敷台としての役目を果たすに十分なものであれば足りると解するのが相当である。

四 次に、前記構成要件(1)の「平板」及び「突出部」の構造について、被告らは、右平板及び突出部はいずれも中実状のものに限定される旨主張するので、この点について判断する。

1 被告らは、本件登録請求の範囲及び本件明細書の考案の詳細な説明の欄中の記載(実用新案公報(甲)二欄三一、三二行、三三、三四行)から、平板の表裏に孔が、また表面に突出部が各設けられている以外は、平板の表裏は平面をなしていることが明らかであり、なお、本件登録請求の範囲の「平板1………の表面に………突出部3を設けた」との文言からは、突出部の内面が中空であるとの技術思想ないし構造は、いかなる意味においても出てこない旨主張する。

しかして、本件登録請求の範囲に前顕甲第二号証によつて認められる本件明細書の考案の詳細な説明の欄の「2は平板1上に設けられた孔であつて、」(実用新案公報(甲)二欄三一、三二行)、「3は、平板1の表面に設けられた突出部であつて、」(二欄三三、三四行)との記載を総合すれば、孔の点を除いた本件考案に係る敷台の基本的構造は、「平板の表面に突出部が設けられた構造に、発泡したプラスチツクで、一体に、すなわち継ぎ合わせたり貼り合わせたりすることなく、形成したもの」であり、右平板は、説明の順序として、突出部及び孔が設けられる前の形状を指称するものであることが認められる。もとより、実用新案権の対象たる考案は、物品の形状、構造又は組合せに係るものであつて、ある物件が考案の構成要件たる形状、構造又は組合せを充足する限り、その製法のいかんを問わず当該考案の技術的範囲に属するとされるのではあるが、本件登録請求の範囲の「平板1………の表面に………突出部3を設けた」との文言及び考案の詳細な説明の欄の右引用部分の記載から直ちに、被告ら主張の如く平板の表裏に孔が、また、表面に突出部が各設けられている以外は、平板の表裏は平面をなしていることが明らかであるとか、突出部の内面が中空であるとの技術思想ないし構造は、いかなる意味においても出てこないとか速断することは到底できないし、本件明細書にも、平板及び突出部が中実状のものに限定されるかどうかを明示する記載はないので、前記のように「平板の表面に突出部が設けられた構造」に「発泡したプラスチツクで一体に形成」するための製法について検討する。

本件明細書には、本件考案に係る敷台の製法についての格別の記載はないところ、成立に争いのない甲第一一号証、本件口頭弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第八号証、第九号証の一ないし一一、第一〇号証の一、二、本件口頭弁論の全趣旨によれば、

本件考案の出願当時、発泡したプラスチツクを素材としてこれを一体に形成して成形品(突出部のあるものを含む。)を製作する方法として、

(1) ビーズ成形法、すなわち、発泡剤を含ませたポリスチレンのビーズ(小粒子)を、所望の量だけ成形用金型の中に入れて加熱し、これを発泡、膨脹、融着させ、金型内に充満させて所望の形に一体に形成する方法、及び、

(2) シート成形法、すなわち、発泡剤を含ませたポリスチレンを加熱して発泡させることにより作つた発泡ポリスチレンのシートを素材として、真空成形などの成形法を施して所望の形に一体に形成する方法(その代表的なものが真空成形法である。)

とが用いられており、ポリスチレンのビーズもポリスチレンのシートも製造、販売され、また、ビーズ成形法、シート成形法によつて一体に形成されたコツプ等が市販されていたこと、突出部のある成形品を製作する場合、ビーズ成形法を用いればその突出部が中実状のものも中空のものも得られ、シート成形法を用いればその突出部が中空のものが得られたことが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。してみると、本件考案に係る敷台も、「発泡したプラスチツクで一体に形成したもの」である以上、その製法は右認定に係る製法と別異に解すべき根拠はなく、当業技術者であれば、本件登録請求の範囲から、本件考案に係る敷台の製法として右ビーズ成形法とシート成形法を想起したであろうことは推認するに難くない。

以上の、発泡したプラスチツクを素材としてこれを一体に形成して成形品を製作する方法についての本件考案の出願当時の技術水準及び本件登録請求の範囲から想起される本件考案に係る敷台の製法に、次のような事実、すなわち、本件考案が「平板」を要件としたのは、前記のとおり畑地において西瓜等の果菜類の下に敷き、それら果菜類を病虫害から保護し、完全な成育を図るための敷台としての役目を果たす必要から平板状であることを必要とするからであり、そのような敷台としての役目を果たすに足りる平板状であればよいと解されること、本件登録請求の範囲及び前顕甲第二号証によつて認められる本件明細書の記載によれば、本件考案の技術思想ないし本件考案の目的は、平板の表面に果菜類を支えるための複数個の突出部と水抜き用の孔が設けられた構造に、発泡したプラスチツクで一体に形成された敷台という構成を採ることにより、前記二認定の作用効果を達成したことにあると認められ、右突出部が中空のものであつても、突出部が中空であることにより右本件考案の作用効果(いずれも、右構成を採ることによる作用効果であつて、突出部が中空ではなく中実状であるが故の作用効果ではない。)の全部又は一部を奏しえなくなるという特段の事情はなく、この点において右突出部が中実状のものと何ら差異はないこと、成立に争いのない甲第一二号証の九(壜類運搬容器についての考案に係る実用新案公報昭三九―三二九〇八)によれば、「突極4を底板3と一体に中空状に形成し」た実施例を含むものとして、その実用新案登録請求の範囲の欄に「底板3上に適宜高さの多数の突極4が規則的に配置突設され」と記載されている明細書の例があることが認められることを併せ考えれば、本件考案の構成要件(1)にいう「平板」及び「突出部」は、中実状のものに限定されず、中空のものも含むものと解するのを相当とする。

2 被告らは、本件明細書の添附図面の第1、第3、第4、第6図に示される突出部3及び平板1は、いずれも中実状であつて、これらの内面が中空のものは示されておらず、かかる添附図面の如き中実状のものは、真空成形法によつては形成することが不可能である旨主張するが、本件明細書の添附図面が本件考案の一実施例を示すものにすぎないことは前記三1に説示のとおりであるから、被告ら主張のとおりであるとしても、何ら右1の判断を左右しない。

また、被告らは、突出部及び平板の内面を中実状でなく中空にし敷台の下面に地面と接しない空間を形成するなどして保温性の向上等を企図する被告考案が、本件実用新案権とは別個の実用新案権として確立されていると主張する。成立に争いのない乙第二号証によれば、被告考案の実用新案登録請求の範囲の欄には、「内面中空であつて且つその表面に節を備えた突隆部」と記載され、考案の詳細な説明の欄には、「放射状に配列された突隆部1を設け、該突隆部1の下面に地面と接しない空間9を形成した結果、夜間等に土壌の温度が急に低くなつてもメロンに直接悪影響を及ぼすことなく保温性に優れ、」(実用新案公報(乙)二欄三一ないし三五行)と記載されていることが認められるが、かかる事実だけでは何ら右1の判断を左右しない。

3 以上によれば、前記構成要件(1)の「平板」及び「突出部」はいずれも中実状のものに限定される旨の被告らの主張は失当という外なく、これらは中実状のものと中空のものの双方を含むものと解するを相当とする。

五 被告らが業としてイ号物件(検甲第四号証、甲第四号証、第六号証の一、二、第七号証のもの)を製造し、「すいかパツド」と名付けて販売していることは当事者間に争いがなく、イ号物件であること当事者間に争いのない検甲第四号証、成立に争いのない甲第四号証、イ号物件の写真であること当事者間に争いのない甲第六号証の一、二、第七号証によれば、イ号物件の構造は別紙(〔編註〕省略)第一目録記載のとおりであるとするのが相当である。

そこで、右別紙第一目録の記載により、本件考案の構成要件に対応してイ号物件の構成を分説すると、次のとおりであると認められる。

(1)´ 方形状の外周縁辺を有する平坦部3に、その表面から裏面にまで貫通する円形の孔4が設けられ、かつ、その表面に平坦部3の中心に向つて放射状に配列された四個の同形の内面中空の突隆部2が設けられていること、

(2)´ 右(1)´のような構造に発泡したプラスチツクで一体に真空成形されていること、

(3)´ 薄手の果菜類用敷台であること。

してみれば、イ号物件の構成(1)´、(2)´、(3)´が本件考案の構成要件(1)、(2)、(3)をそれぞれ充足することが明らかであるから、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属するものといわなければならない。

被告らは、イ号物件は、「平板」が薄手のものであり、「突出部」が中空状のものである点、また、真空成形法によつて製作されるものである点において、本件考案の構成要件を充足しないと主張するが、本件考案にいう「平板」が厚手のものに限定されないこと、「突出部」が中実状のものに限定されず中空のものも含むこと、本件考案に係る敷台が真空成形法によつて製作されるものも含むことは前記のとおりであるから、右主張は失当である。

六 なお、被告らは、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属さないことはイ号物件が被告考案の実施品であることからも明らかである旨主張するので、念のためこの点について判断する。

1 前顕乙第二号証によれば、被告考案の登録出願の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、「発泡樹脂板を素材とするシートに内面中空であつて且つその表面に節を備えた突隆部を放射状に配設し、前記シートの適宜個所に通孔を穿設してなるメロン用シート。」であることが認められ、右実用新案登録請求の範囲の記載に前顕乙第二号証を総合すれば、被告考案は、本件考案と同じく果菜類用敷台に関する考案であつて、その構成要件は、次のとおりであることが認められる。

(一) 発泡樹脂板を素材とするシートに、内面中空であつてかつその表面に節を備えた突隆部が放射状に配設されていること、

(二) 前記シートの適宜個所に通孔が穿設されていること、

(三) メロン用シートであること。

2 原告は、イ号物件は、被告考案の必須の構成要件たる「節」を備えていないから、被告考案の実施品ではないと主張するので、右構成要件(一)の「節」がいかなるものであるかについて考察する。

前顕乙第二号証によれば、被告考案の明細書の考案の詳細な説明の欄に、「また該突隆部1には軸直交方向に円弧状に突出する節7を数個設けた結果、従来のシートの如くメロンの外周を面接触ではなく点接触状に支承するものであるから、このためメロンの外周全面に亘つて通気配光されてその発育成長が極めて良好であり、また支承面によつて幼果の自然な成長を阻害したりその外皮を損傷する虞れがない。しかもこの節7は突隆部1のリブとして有効に働き、幼果の成長と共に重量が大きくなつても充分支承できるのである。」(実用新案公報(乙)二欄三七行ないし三欄八行。ただし、「従来ノシート」とあるのは、「従来のシート」の誤記と認める。)と記載されていること、そして、右引用部分は、その記載の位置及び趣旨にかんがみ、被告考案の本質的な構成及び作用効果についての記述であることが認められ、これによれば、右構成要件(一)にいう「節」とは、突隆部から更にその「軸直交方向に円弧状に突出」したものであつて、シートの上に置かれた「メロンの外周を面接触ではなく点接触状に支承」し、かつ、「リブとして有効に働く」という作用効果を奏するもの、すなわち「突隆部から更にその軸直交方向に円弧状に突出して、メロンの外周を点接触状に支承しかつリブとして有効に働くもの」であると解するのが相当である。

そして、「節」を右のように解する以上、右「円弧状に突出」するとは、突隆部の断面の全周にわたつて寸分の跡切もなく突出していることを要するかどうかは別として、少なくとも、メロンの外周と接触する部分には突出していることを要するといわなければならない。けだし、被告考案において「節」は、メロンの外周を点接触状に支承するものであるところ、メロンの外周と接触する部分に突出していない限り、メロンの外周を支承するのは、突隆部そのものであつて、「節」がメロンの外周を点接触状に支承することはありえないからである。

被告らは、被告考案における「円弧状に突出する」「節」とは、果菜類との接触支承が点接触状であり、かつリブ効果を有するものであれば、突隆部の表面の円弧状の弧が、突隆部の軸直交断面のすべてを被つて突出せず、突隆部の上表面の一部に突隆部からの突出のないもの、又は突出の必ずしも明瞭でないものも含むものである旨主張する。

しかしながら、右「上表面の一部」がメロンの外周と接触する部分以外の部分のみを指称するのであれば格別(そうであれば、前認定の「節」の定義と必ずしも矛盾しない。)、メロンの外周と接触する部分をも包含する趣旨の主張であれば、右被告ら主張のような構造のものでは、メロンの外周を支承するのは「節」ではなく突隆部そのものということになるところ、被告考案においてメロンの外周を点接触状に支承するのは突隆部ではなく「節」でなければならないことは前述したところから明らかであるので、被告らの右主張は到底採用の限りでない。

3 イ号物件の構造が別紙第一目録記載のとおりであることは前記五のとおりであり、これによれば、被告考案の突隆部に対応するイ号物件の突隆部2には、その平坦な頂上部分(果菜類の外周と接触する部分)を除いて両側方に被告考案の節に対応する張出部5が突出(張出)していること、換言すれば、突隆部2の平坦な頂上部分(果菜類の外周と接触する部分)には張出部が突出(張出)していないことが認められる。

しかして、被告考案の構成要件(一)にいう「節」とは、前記2認定のとおりであるから、イ号物件は、被告考案の構成要件(一)にいう「節」を備えていないこと、したがつて構成要件(一)を充足しないことが明らかである。

4 よつて、イ号物件は被告考案の実施品であるとは認められないから、イ号物件が被告考案の実施品であることを前提とする主張はいずれにしても失当である。

七 以上によれば、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属するものであり、被告らが業としてイ号物件を製造、販売する行為は、本件実用新案権に対する侵害となる。したがつて、被告らに対し、業としてのイ号物件の製造、譲渡の差止め及び被告ら所有に係るイ号物件の廃棄を求める原告の請求は、いずれも理由があるので、これを認容する。

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